著作者の権利-著作権・著作者人格権

著作物を作成した著作者には、著作物につき著作権(著作財産権)と著作者人格権が付与れます(著作権法17条1項)。

第三者が著作権や著作者人格権を侵害した場合、著作者は、侵害を行った者に対し、損害賠償請求(民法709条)や差止請求(著作権法112条)を行うことができます。

著作者に付与される著作権、著作者人格権とはどのようなものか、以下説明致します。

 

目次

1 著作権

(1)複製権

(2)上演権・演奏権

(3)上映権

(4)公衆送信権等

(5)口述権

(6)展示権

(7)頒布権

(8)譲渡権

(9)貸与権

(10)翻訳権・翻案権等

(11)二次的著作物の利用に関する原著作者の権利

2 著作者人格権

(1)公表権

(2)氏名表示権

(3)同一性保持権

(4)名誉声望権

(5)修正増減請求権

(6)出版権廃絶請求権


 

1 著作権

著作物の使用行為全てが著作権の対象とされているわけではなく、一定の行為のみが著作権の対象とされています。著作権は、著作権法21条以下で限定列挙された権利の集合であり、著作権法に規定されていない権利を著作権として享受することはできません。

その理由は、あらゆる行為が著作権の対象とされてしまえば、著作権法の目的である文化の発展(著作権法1条)を害するからです。

著作権法21条以下で限定列挙された権利についての概要は、下記のとおりです。

(1)複製権

著作者は、著作物を複製する権利を専有します(著作権法21条)。

複製とは、印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再生することをいいます。脚本等、演劇用の著作物については、上演、放送、有線放送を録音、録画すること、建築の著作物については、建築に関する図面に従って建築物を完成させることも複製にあたります(著作権法2条1項15号)。

(2)上演権・演奏権

著作者は、著作物を公に上演、演奏する権利を専有します(著作権法22条)。

演奏とは、音楽(歌唱を含む(著作権法2条1項16号括弧書))を演ずることをいい、上演とは、演奏以外の方法により著作物を演ずることを意味します(著作権法2条1項16号)。

(3)上映権

著作者は、その著作物を公に上映する権利を専有します(著作権法22条の2)。

上映とは、著作物(公衆送信されるものを除く。)を映写幕その他の物に映写することをいい、これに伴って映画の著作物において固定されている音を再生することも含みます(著作権法2条1項17号)。

(4)公衆送信権等

著作者は、その著作物について、公衆送信(自動公衆送信の場合にあっては、送信可能化を含む。)を行う権利(公衆送信権)を専有します(著作権法23条1項)。

また、著作者は、公衆送信される著作物を受信装置を用いて公に伝達する権利(公衆伝達権)も有します(著作権法23条2項)。

上映権と公衆送信権等は似ていますが、両者は、著作物の享受者のいる場所で区別され、上映等を行う者と享受者が同じ場所にいれば、上映権が適用され、離れた場所にいれば公衆送信権等が適用されます。

(5)口述権

著作者は、その言語の著作物を公に口述する権利を専有します(著作権法24条)。

口述とは、朗読その他の方法により著作物を口頭で伝達すること(実演に該当するものを除く。)をいいます(著作権法2条1項18号)。

(6)展示権

著作者は、その美術の著作物又はまだ発行されていない写真の著作物をこれらの原作品により公に展示する権利を専有します(著作権法25条)。

展示権は、「原作品」を展示する権利であるため、複製物による展示は、展示権の適用外といえます。

(7)頒布権

著作者は、映画の著作物をその複製物により頒布する権利を専有します(著作権法26条1項)。また、著作者は、映画の著作物において複製されているその著作物(映画で使用されている音楽や美術等)を当該映画の著作物の複製物により頒布する権利を専有します(著作権法26条2項)。

頒布権における頒布とは、有償・無償にかかわらず映画の著作物の複製物(フィルム等)を「公衆に」譲渡又は貸与すること、あるいは、映画の著作物を公衆に提示することを目的として当該著作物の複製物を譲渡又は貸与する(特定少数に対する譲渡又は貸与を含む。)ことを意味します(著作権法2条1項19号)。頒布対象は、「複製物」のため、放送やインターネット配信等、「複製物」を介さずに著作物を送ることは、頒布にはあたりません(ただし、公衆送信の問題とはなり得ます。)。

(8)譲渡権

著作者は、その著作物(映画の著作物を除く。)をその原作品又は複製物(映画の著作物において複製されている著作物にあっては、当該映画の著作物を除く。)の譲渡により公衆に提供する権利を専有します(著作権法26条の2第1項)。

譲渡権の対象は、原作品か複製物(書籍・CD等)であり、無体物は対象外のため、電子書籍のようなコンテンツ(情報)そのものは、譲渡権の対象となりません(ただし、コンテンツの複製物を公衆に提供した場合には、譲渡権の対象となり得、インターネットでコンテンツを公衆に提供した場合には、公衆送信権の対象となり得ます。)。

著作物の原作品又は複製物が譲渡権者又は譲渡権者から許諾を得た者によって公衆に譲渡等された著作物については、譲渡権が消えてしまい(譲渡権の「消尽」)、以降、当該著作物が転々譲渡されたとしても譲渡権を主張することができません(著作権法26条の2第2項)。

(9)貸与権

著作者は、その著作物(映画の著作物を除く。)をその複製物(映画の著作物において複製されている著作物にあっては、当該映画の著作物を除く。)の貸与により公衆に提供する権利を専有します(著作権法26条の3)。

貸与権の対象は、複製物であり、無体物、原作品は対象外です。

貸与権には消尽を認める規定はなく、たとえ譲渡権が消尽している複製物であっても、貸与権が消尽することはありません。

(10)翻訳権・翻案権等

著作者は、その著作物に基づいて二次著作物を創作する権利を専有します(著作権法27条)。

二次的著作物とは、著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案することにより創作した著作物のことをいいます(著作権法2条1項11号)。

(11)二次的創作物の利用に関する原著作権者の権利

二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次著作物の利用に関し、二次的著作物の著作者が有するもの同一の種類の権利を専有します(著作権法28条)。

二次的著作物の著作者の権利は、原著作者の権利に影響を及ぼしません(著作権法11条)。二次的著作物には二次的著作物の著作者と原著作者の権利が並存するため、二次的著作物の利用者は、両者に利用許諾を得る必要があります。

2 著作者人格権

著作者人格権は、著作者の著作物について有する人格的利益を保護するための権利です。

著作者人格権は、著作者の一身に専属し、譲渡することはできません(著作権法59条)。

著作者人格権の侵害がなされた場合、著作権侵害と同様に損害賠償請求(民法709条)、差止請求(著作権法112条)を行うことができる他、名誉回復措置(著作権法115条)といった特別の措置を請求することもできます。

著作権法では著作者人格権として以下のような権利を規定しています。

(1)公表権

著作者は、その著作物でまだ公表されていないもの(その同意を得ないで公表された著作物を含む。)を公衆に提供し、又は提示する権利を有します。当該著作物を原著作物とする二次的著作物についても同様です(著作権法18条1項)。

未公表の著作物の著作権を譲渡した場合等には、著作物の公表に著作者が同意したと推定されます(著作権法18条2項)。

(2)氏名表示権

著作者は、その著作物の原作品に、又はその著作物の公衆への提供若しくは提示に際し、その実名若しくは変名を著作者名として表示し、又は著作者名を表示しないこととする権利を有します。その著作物を原著作物とする二次的著作物の公衆への提供又は提示に際しての原著作物の著作者名の表示についても、同様です(著作権法19条1項)。

著作者が別段の意思表示で他の表示方法を指定しない限り、著作者に許諾を得ることなく、既に著作者が表示しているところに従い、著作者名を表示できます(著作権法19条2項)。

また、著作物の利用目的等に照らし著作者の利益を害するおそれがないと認められる場合、公正な慣行に反しない限り、著作者名の表示を省略することができます(著作権法19条3項)。

情報公開法に基づき著作者の氏名を省略できる場合もあります(著作権法19条4項)。

(3)同一性保持権

著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとされています(著作権法20条1項)。

教育目的など、やむを得ない改変の場合、同一性保持権の適用が除外される場合があります(著作権法20条2項)。

(4)名誉声望権

著作者の名誉又は声望を害する方法によりその著作物を利用する行為は、その著作者人格権を侵害する行為とみなされます(著作権法113条11項)。

名誉・声望は主観的な名誉感情ではなく、客観的な名誉・声望を意味します。

(5)修正増減請求権

出版権が設定された著作物を出版権者が改めて複製等する場合には、著作者は、改めて複製等される著作物に修正又は増減を加えることができます(著作権法82条1項)。

(6)出版権廃絶請求権

複製権等保有者である著作者は、その著作物の内容が自己の確信に適合しなくなったときは、その著作物の出版行為等を廃絶するために、出版権者に通知してその出版権を消滅させることができます。ただし、当該廃絶により出版権者に通常生ずべき損害をあらかじめ賠償しない場合は、この限りではありません(著作権法84条3項)

 


執筆

福島県弁護士会(会津若松支部)所属
葵綜合法律事務所 弁護士 新田 周作