著作物について‐著作権にまつわる法律問題

個人ないし企業内で作成した文書や動画などの著作物が第三者に無断で複製、利用されたり、インターネット上にアップロードされたりした場合、複製などを行った第三者に対し、著作権に基づき、法的請求を行える可能性があります。

ここでは、著作権による保護の対象となる「著作物」とは、どのようなものなのか説明いたします。

1 著作物とは

著作権法2条1項1号によれば、著作物とは、(1)思想又は感情を(2)創作的に(3)表現したものであって、(4)文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものとされています。

2 各要件について

(1)「思想又は感情」

単なるデータは著作物から除かれます(ただし、データベースなど、データの組み合わせが著作物となる場合があります)。AIが自律的に作成した表現物も思想や感情に基づかないため著作物ではないと判断される可能性が高いといえます。

(2)「創作的」表現

表現に個性が現れている必要があります。単なる模倣は著作物から除かれます。

(3)「表現」

具体的表現である必要があり、単なるアイデアは著作物から除かれます。小説や漫画の抽象的な設定、ゲームのルール、研究の結果発見された法則などはアイデアであり、著作物ではないと判断されまる可能性が高いといえます。

(4)「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」

純粋美術といえない工業製品が著作物から除かれます。

 

以上の要件を充たした表現物が著作物として認められます。

著作物と認められる場合、私的使用などの正当事由がない限り、当該著作物の複製行為やインターネット上に無断でアップロードする行為などは著作権侵害となり、著作者は、著作権侵害を行った者に対し、損害賠償請求や差止請求などを行うことができます。


執筆

福島県弁護士会(会津若松支部)所属
葵綜合法律事務所 弁護士 新田 周作