遺産相続ー遺産の承継手続について
親や配偶者等が亡くなってから,相続人等の権利者が亡くなった方(被相続人)の遺産を承継するには,どのような手続が必要になるでしょう。ここでは,遺産の承継手続について説明いたします。
1 遺言がある場合
(1)原則
遺言がある場合,遺言の内容に沿って遺産の承継を行うのが原則となります。
遺言には,普通方式の遺言と,特別方式の遺言とがあります。
普通方式の遺言は,①自筆証書遺言,②公正証書遺言,③秘密証書遺言の3種類があります。特別方式の遺言は,④死亡危急者遺言,⑤伝染病隔離者遺言,⑥在船者遺言,⑦船舶遭難者遺言の4種類があります。
一般的には,普通方式の遺言が用いられ,このうち自筆証書遺言と公正証書遺言が遺言として最も用いられる方法です。
④,⑦は,家庭裁判所に請求して確認を得なければ効力を生じません。
また,②及び①のうち保管制度を利用した遺言(遺言書保管法に基づき保管されている自筆証書遺言)以外については,家庭裁判所において,検認手続を行う必要があります。
(2)例外
遺言能力を欠く場合,遺言が民法の定めた形式に従わず作成された等の事情がある場合,遺言は無効となり,遺産分割(詳細は次項で説明いたします。)によって遺産の承継を行う必要があります。
また,遺言があったとしても,遺言と異なる内容の遺産分割も有効であると解されております(さいたま地裁平成14年2月7日判決)。相続人間の話し合いにより,遺言と異なる内容で遺産を承継させても原則問題がありません。
遺言の対象となっていない遺産についても遺産分割によって遺産の承継を行う必要があります。
2 遺言がない場合
(1)承継方法
遺言がない場合,遺産が相続人の相続分に従い,各相続人の共有となります(民法898条)。共有となっている遺産を各相続人の単独所有にする等,各相続人へ確定的に遺産を承継するために遺産分割を行うことになります(民法909条)。
遺産分割は通常,①遺産分割協議,②遺産分割調停,③遺産分割審判といった方法によって行われます。
①は,裁判所外での話し合いによる遺産分割の方法です。
②も話し合いによる遺産分割の方法ですが,手続は,家庭裁判所において行われます。
③では,遺産分割方法を裁判所が決定します。
①で話し合いがまとまらなければ,②の調停を裁判所に申立て,それでも話し合いがまとまらなければ③によって遺産分割を決めるといった流れが一般的です。
(2)遺産分割で定めるべき内容
遺産分割では,①相続人の範囲,②遺産の範囲,③分割割合,④分割方法を具体的に確定させる必要があります。
各段階では,代襲相続や相続欠格・廃除(①の問題),遺産適格性・遺産分割対象性(②の問題),特別受益・寄与分(③の問題),代償分割か換価分割か(④の問題)などといった問題が生じる可能性があります。各段階で問題が生じ,遺産分割が円滑に進まない場合,弁護士等の専門家にご相談されることをお勧めします。
執筆
福島県弁護士会(会津若松支部)所属
葵綜合法律事務所 弁護士 新田 周作